スウィス日記
(辻村
伊助著 1922年 468p 平凡社 ISBN4-582-76235-2)
序章で、「忘却は人間の最大の美点である」としながら、「それを敢えて書き残す」のは、いつ記憶に蘇っても後悔することがないからだとまで言わしめさせた、スイスの自然、いや、アルプスの美しい自然を書き残したもの。辻村伊助は数度スイスに出かけており、妻も実はスイス人である。
日記というタイトル通り、いくつかの短編というか、日記みたいな感じのものが多く並べられて一つの書物としての形態をなしている。そして、それらの全てがスイスの、いやアルプスの美しさを余すところなく描いている。まさにアルプスに惚れ込んだ男のアルプスへの愛情の総結集とでも言えようか。ヨーロッパアルプスなど、そう簡単にいけるものではないし、どんな物かもまるで見当がつかない人が大半であろうが、そんな世界への憧憬を高める文献である。
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